ドクガクテツガク編集部ができるまで
笹木咲との出会い
咲ちゃんは、自分が喋るときも他人に耳を傾けながら話す人である。出会ったきっかけは、私のバイト先である本の制作プロダクションに、彼女がインターンに来たことだった。不思議な人だと思った。少し俯きがちに発する声の一つ一つが、彼女を取り巻くベールの中でこだましているようであった。平安貴族の末裔のような名前も、どこかしら独特な感じがした。
実際の印象とは裏腹に、咲ちゃんは積極的に行動する人物であった。真っ暗な部屋で食事をする暗闇食堂に行ったり、密林の中で一週間ひたすら自己と対話する合宿に行ったりする。心理学を専攻しており、大学の先生から勧められて参加したとのことであったが、その勇気と実行力に驚いた。
そんなこんなで以前から練っていた「衝撃的な人物に、その理由を訊く新聞を作りたい」という構想を持ちかけ、ドクガクテツガク編集部が結成されたのである。
高橋ミホとの出会い
ミホさんは草原から駆けて来たような人である。
ミホさんが後ろを振り返ると、側には鈴をつけたヤギが「メー」と鳴きながら踊っているような気がする。
「知ってますか? 自転車のカゴに自分が作った新聞を入れて、ばらまく方法があるんですって!」とミホさん。手には「貧乏人の逆襲!」の本があった。その本でミホさんは「インターネットラジオ」の存在も知り、大変驚いていた。
何か反逆心を抱いているのかな、と思ったがそうではなく、何かを社会に発信することに目を輝かせていたのだった。早速、ミホさんは「アリの通信販売やっている人に話を聴きたい」と言っていたが、自分ではラジオで話すつもりはなかった。ミホさんはシャイなので、話したくないらしい。面白いのに勿体ない。
そこで、媒体をウェブマガジンにして、発信することになった。
ウェブマガジンの作成もなかなか難しく、手ごわい。
だが、このドクガクテツガクは、社会に発信する初めての作品である。
多くの人にとって、気になる存在になることを願う。
2012年9月14日 かな子