どろどろ愛憎劇☆ママとわたしのファッションショー
東京・国際展示場で行われていた、『イクメン?フェスタ』に潜入。
イクメンを演じたい親と戦慄く子供。
自己顕示欲渦巻く、悲劇のファッションショーを覗き見した。
国際展示場では、ベビーカーフェアが行われていた。場内は若い親子で賑わっている。
手抜きグッズを検挙しちゃうぞ。
mamaroo(ママルー)
近未来から持ってきたようなロボット型揺りかご。
ベッドの中央に赤ん坊を乗せると、母親が抱いてあやす動きに似た揺れ方をするそうだ。
この機械を見て思い出したのは、第二次世界大戦中のヒトラー政権下で行われた人体実験だ。「ロボットにユダヤ人の赤ちゃんを育てさせたらどうなるか」というものだ。
その結果、赤ちゃんは1歳になるまでに死んでしまったという。
子育ては過酷だ。機械を使ったからと言って、手抜きをしているとは少しも思わない。重い赤ちゃんを抱えていると、腱鞘炎になる親もいるほどだ。
この商品は、四六時中抱いていないと、泣き喚く赤ん坊を持つ親にとっては、救世主なのだそう。色合いも美しく、開発者の熱意や愛を感じられる商品でもある。
だが、見慣れないものということもあり、なんとなく恐ろしい。
この機械を使ってみたら、「やっぱりロボットが手伝ってくれてよかった」と胸をなで下ろすのだろうか。
イクメンフェスタ☆
子供のファッションショー
大きな舞台の上で行われていたのは、イクメン雑誌「FQ JAPAN」が企画したファッションショーだ。親と5歳までの子供が壇上でお得意のファッションを披露する。
審査員もいるので、皆真剣だ。
「イクメン」に抱かれて登場したのは、まだ首も据わらない赤ちゃん。自分の顔の半分程度の大きさの薔薇を、鉢巻のようにピンクのレースの紐で括りつけられている。この強引さと手作り感が、妙な味を醸し出しているのだ。
「I LOVE MAMA」という雑誌をご存じだろうか。ギャルママのための総合ファッション紙で、いかにコスパのよくお洒落な生活をするかに知恵が絞られている。
小さくなった子供の靴下を便座カバーに使ったり、すのこをコーヒーで塗ってメルヘンな本棚を造ったり。和室の障子を、100円均一で買った布や造花で隠して、洋間を目指したりする。そんな日暮里的センスの光るお部屋の数々を思い出した。
壇上に登場する子供が小さかったり、父親が格好よかったりすると、場は盛り上がる。
だが、自己顕示欲むき出しの親が登場すると明らかに場がしらける。次に登場した女の子の頭には、ハローウィーンを意識したのか、こぶしほどのカボチャが3つも載せられていて、かわいいというより気の毒な印象だ。お手製の服は、不思議の国の少女のワンピースだが、なんだかちぐはぐだ。しらけた空気を悟った子供の表情がこわばった。意気込んできた分、余計に切ない。
LEE読者風の小綺麗な母親達も「あれは無いよねー」と囁き合い、ときには片頬を歪めて嘲笑している。
他人の子には容赦ないのだ。
脇では美容師風の母親が、6歳くらいの子供の腕を思い切り引っ張っている。「あんたも今度出るんだから、ちゃんと見ないとダメ!」男の子は肩をいからせ、引っ張られた腕をふりほどこうと必死に抵抗している。横には手作りの洋服を着せられた女の子が、母と兄の様子をおずおずと伺っている。
ちなみに育児とおしゃれに奮闘する母親を、イクメン雑誌FQは「輝ママ(キラママ)」と呼んでいるそうだ。
あのダルビッシュ紗栄子が、輝ママのカリスマ的存在の一員として、イベントに招かれている。
納得である。
居たたまれない気持ちになったので、玩具を見に行くことに。
大人も乗れるお馬さん
ペダルに体重をかけると、『エコポニー』がぴょこぴょこと前進する仕組みだ。ドイツの『シュライヒ・ランド』というメーカーが、「大人のお馬が欲しい!」との声に、応えて造ったものだそう。
シマウマ、ロバ、馬の3種類があり、評判も上々だという。
ハンドルでシマウマの顔を左右に動かし、方向転換することもできるのだ。お値段、およそ9万円なり。
とても愉快で、この馬に乗ったことが一番楽しかった。
成金ベビーカー
小生意気なベビーカーだ。中央にはBMWのマークが光っている。100円玉の価値もわからない子供を乗せる親の顔が見てみたい。
こういうベビーカーは、金持ちが買っているのではなく、
本当はBMWの車が欲しい親が、妥協して買っているのかもしれない。
イクメンフェスタを見て
イクメンフェスタで面白かったのは、色んな親子を見られたことだ。
ロックが好きそうな若いご両親は、ベビーカーにギターの玩具をつけていたし、ロリータ服のママは、赤ちゃんにかわいいレースの服を着せていた。
親の影響は、子供が物心つく前から染みついている。
愛の形は、子供に微笑みかけ、慈しむことだけではない。軋轢を生んだり、歪であるのも、親の愛情の一つの形なのだ。とはいえ、今日見た激しい愛憎劇の数々を、忘れることはないだろう。
文・絵 ドクガクテツガク編集部 かな子